一時帰国して気づいたジルの変化。


わたしのことを忘れてしまったようで、家族のそばにもよらず、散歩もせず。


食べることが何より大好きだったのに、ついには食欲不振にまでなりました。


胃もたれだと譲らない獣医に頼み込んで行った血液検査で、腎不全末期、即日入院が告げられました。


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診察直前のジル



最初は、病気だと分かったのだからこれでよくなるのだと楽観的に考えていました。


だって、今まで毎回「年齢の割に元気ですね!」「悪いところどこにもないですよ!」と言われていたジルなのです。


今回だって1か月前の検診では問題なし。






きっと治るはずだとそう楽観視できていたのは、荷物を取りに一時帰宅した時まででした。




インターネットで調べれば調べるほど、残酷な事実が分かっていきます。

壊れた腎臓は元には戻らない。

そして腎臓は沈黙の臓器と呼ばれ、症状が確認できた時には腎臓の大半が壊れてしまっている。特に犬は症状が出た時には手遅れなことが多い。


腎不全にはタンパク質とリンが大敵なこと、水分補給が大切なこと、ドライとウェットとさまざまな腎臓食が販売されていること。


だんだんと食欲もなくなり、点滴も欠かせず、やせ細って最後は癲癇の発作が起きることもあり、苦しんで亡くなっていく。


ジルのBUNとCREAの値はステージ3と言われるくらいのものでした。



初日は、どうしてジルが。ごめんね、ジル。そればかり考えていました。


余命は全く読めず、数週間から数か月、1年生きる子もいるらしい。


ジルは20歳近くまで生きるのだとずっと思っていました。


ヨーキーの寿命は14年ぐらいと言われているものの、あんなに元気だったジルなのに。


あまりに早すぎる。



もっと早く気づいてあげられなくてごめん。



苦しいのに散歩に無理に連れて行って、そばに来てくれないことを拗ねて、そしてこの1年間ずっと一緒にいられなくてごめん。



嗚咽が止まらず、発作的に母に泣きついてはまたネットでの情報収集に戻る。



そうこうしているうちに、午後の診察時間になりました。


いつも食べているごはんと毛布とおもちゃを差し入れに病院に戻ります。



数時間前から始めた点滴を一時中止し、ジルに会えることになりました。



ジルは手に点滴の針を残したまま、看護師さんに抱かれて出てきました。


病院にいると、ジルはいつも震えていました。そして飼い主から離れると必死になって戻ろうともがくのが常でした。



でもこの時は震えず、ぼーっとした顔で私と母を見つめます。



誰だか、わかっていないようでした。





もうジルちゃんは長く生きられないんだ。




細い小さな足に入れられた点滴の針。


力なく抱かれるジルの姿。


病院の待合室でも涙が止まりませんでした。

母と二人、獣医さんと看護師さんに頭を下げてジルのことを頼みました。




それから三泊四日の間、毎日ジルのお見舞いに通いました。


相変わらずこちらのことをわかっていない様子のジルでしたが、静脈からの点滴が功を奏したのか、血液検査の値はどんどん良くなります。

発見時に静脈点滴がもう効かない子もいると聞いていたので、一筋の光が見えた気分でした。



いつもあげていたドッグフードはタンパク質もリンも高いものだったので、すこしでも体にいい腎臓食を食べさせてほしいとお願いしました。


が、


カリカリは食べなかった、缶詰めは少し食べたが、おなかがゆるくなってしまったと言われました。


腎臓食にもタンパク質が低すぎる、脂質が高すぎるなどの賛否両論ありますが、今までのフードよりも腎臓にやさしいはず。


腎臓用フードで長生きした子のブログを読み漁っていたこともあり、看護師さんに取り扱いのあるすべてのフードを試してほしいとお願いしました。
(そこはヒルズとロイカナ、キドニーサポートを扱っていました)


「全部試したんですが、だめでした」


この時点で入院3日目の朝。最初の夜と次の日の朝は今までのフードをあげたと聞いています。一日2回の給餌と考えても計算が合いません。不信感が沸きます。


「食べたいものを食べさせるほうが大事です」


食べたい味の腎臓フードがあるかもしれない。

缶詰めだって、お腹に合うのがあるかもしれない。

そう言いたいのを飲み込みました。



ジルがいない間、ふとした瞬間に涙があふれます。

家の中の空気は暗く、ごはんも気持ち悪くてほとんど食べることができなくなりました。

食べなきゃと口に入れて噛んでいるうちに気持ち悪くなって、飲み込むことができません。

低血糖になってふらつくので、カロリー高めの炭酸飲料をこまめに飲みました。

(良いのか悪いのか、アメリカとコロナで太った3キロがみるみる消費されていきました…)




待ちに待った4日目、ジルを迎えに行きました。



血液検査の結果はBUNが50台、Creaが2。まずまずの結果です。


でもこれは絶えず静脈から点滴し続けた時の値なので、問題はこれがどこまで上がり、そして少しでも低く維持されていくか。


腎臓病が進んだわんこは腎臓の働きが鈍っているため、たくさんの水分を必要とします。

低たんぱく・低リン食で腎臓への負担を減らし、たくさんの水分で少しでも毒素を出す。

多飲多尿で、摂取した水の割には毒素の排出がされません。

なので水をたくさん飲んでも追いつかず、皮下点滴での補水が行われます。



ネットからの情報で自宅での皮下点滴が可能だと知り、病院嫌いのジルのために我が家ではそちらを選択しました。
(金額も処置分がなくなるので少し安くなります)


翌日夕方に皮下点滴の仕方を実地で教えてもらうことにして、会計を済ませようとした時。


受付で、腎臓食のサンプルを3種類渡されました。


「え…全部試して、食べないかもしくは体に合わなかったんですよね?」

「え?」


受付の看護師さんは先日とは違う人だったので、聞いていなかったのかもしれないと確認しました。


「いや、全部は試してないですよ。カリカリ1種類、缶詰め1種類です」

「え!?試してないんですか?あげたのはどの種類ですか??」


試した、そしてダメだったのではなかったのか。


びっくりしましたが、まだ試せる腎臓食があるというのはいいことです。


すると看護師さんはカルテをちらっと見て…


「ごめんなさい…そこまではわかりません」


愕然としました。獣医とはいえ、病院です。なにを与えたのかすら把握していないなんて。



先日からふつふつと募っていた不信感が一層強くなりました。



そして、ジルを家に連れて家に帰ったあと。



クレートから出てきたジルは、2,3歩歩いたと思うとぺたんとしりもちをつきました。

体が小刻みに震えています。

立ち上がろうとしてもうまくいかず、何度か足に力を入れようとがんばり、ようやく立ち上がって一歩二歩…フラっと力が抜けます。


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ケージのうまく段差が上がれなかったので、急遽ベッドを前にも設置。



4日間、きっと狭いケージの中でずっとうずくまって点滴を受けていたのでしょう。

病院だもの、歩くことなんてできなかったのだと思います。




その日は、心なしか一回り小さくなった気がするジルのケージの前でマグと一緒にお昼寝しました。


ジルのにおいがするのに安心して、この小さな命があと少しで消えてしまうなんて信じられなくて、また泣きながら一緒に寝ました。








それから、ジルとの最後の夏が始まりました。